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東京地方裁判所 平成8年(ワ)1042号 判決

千葉市稲毛区天台一丁目二五番八号

原告

篠塚賢二

東京都大田区中馬込一丁目三番六号

被告

株式会社リコー

右代表者代表取締役

桜井正光

右訴訟代理人弁護士

杉本進介

主文

一  本件訴えを却下する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

被告は、原告に対し、金一八三万四〇〇〇円及びこれに対する昭和五六年六月一四日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

一  本件は、後記二1の実用新案権(以下「本件実用新案権」という。)を有していた原告が、別紙目録(一)記載の製品(商品名「リコーPPC九〇〇及びB・Aチェンジャー」。以下「イ号製品」という。ただし、同目録は図面を除き争いがある。)、同目録(二)記載の製品(商品名「リコーPPC九〇〇及びセンタースリッター」。以下「ロ号製品」という。ただし、同目録は図面を除き争いがある。)及び同目録(三)記載の製品(商品名「リコピーPL五〇〇〇オート」。以下「ハ号製品」という。ただし、同目録は図面を除き争いがある。また、イ号製品ないしハ号製品を総称して「被告製品」という。)を製造販売した被告に対し、被告製品は本件実用新案権を侵害するものであったとして、主位的に不法行為による損害賠償請求権に基づき、予備的に不当利得返還請求権に基づき、イ号製品については、昭和五三年一月から昭和五六年六月一三日までの間に一台一〇六万八〇〇〇円で九万台製造販売され実施料相当額は販売価格の五パーセントであるとして、そのうち当初の一万八〇一〇台を除いたその後の五台について二六万七〇〇〇円の、ロ号製品については、右同期間に右同価額で二万台製造販売され実施料相当額は販売価格の五パーセントであるとして、そのうち当初の四〇一〇台を除いたその後の五台について二六万七〇〇〇円の、ハ号製品については、昭和五三年八月一五日から昭和五六年六月一三日までの間に一台五二〇万円で四万台製造販売され実施料相当額は販売価格の五パーセントであるとして、そのうち当初の八〇一〇台を除いたその後の五台について一三〇万円の、合計一八三万四〇〇〇円及び不法行為又は不当利得の後の日からの遅延損害金の支払いを求めている事案である。

二  基礎となる事実

1  原告は、左記実用新案権を有していた。(争いがない。)

登録番号 第九七八六〇二号

考案の名称 カツター装置付きテープホルダー

出願日 昭和四一年六月一三日

出願公告日 昭和四七年一月二二日

登録日 昭和四七年九月二九日

存続期間満了日 昭和五六年六月一三日

2  被告は、業として、昭和五三年一月から同五六年六月一三日までの間にイ号製品及びロ号製品を、同五三年八月一五日から同五六年六月一三日までの間にハ号製品をそれぞれ製造販売した。(争いがない。)

3  本件実用新案権に係る考案の実用新案登録出願の願書に添付した明細書の実用新案登録請求の範囲は、別紙実用新案公報写の該当欄記載のとおりである。(争いがない。)

4  原告は、本件訴訟の提起より前に、被告に対し、左記〈1〉ないし〈15〉のとおり、被告が昭和四七年三月から同五二年一二月までの間にイ号製品及びロ号製品を、同四七年二月から同五三年七月までの間(一部の事件では同四四年一〇月から同五三年八月一四日までの間)にハ号製品を、それぞれ製造販売したことにより本件実用新案権を侵害したとして、これによる金銭請求を一部請求に細分化して、一五回にわたり当裁判所へ訴訟を提起し、また、左記〈16〉ないし〈28〉のとおり、被告が同五三年一月から同五六年六月一三日までの間にイ号製品及びロ号製品を、同五三年八月一五日から同五六年六月一三日までの間にハ号製品を、それぞれ製造販売したことにより本件実用新案権を侵害したとして、これによる金銭請求を一部請求に細分化して、一三回にわたり当裁判所へ訴訟を提起している(合計二八回。以下、これらの事件を「旧訴」といい、個々の事件を「〈1〉事件」ないし「〈28〉事件」という。)。(乙一ないし六及び弁論の全趣旨)

旧訴では、〈2〉事件の判決が前訴である〈1〉事件の既判力を理由に原告の請求を棄却し、〈16〉事件の判決が消滅時効を理由に原告の請求を棄却し、〈15〉及び〈28〉事件の判決が原告の訴えを却下した以外は、いずれの訴訟の判決も被告製品は本件実用新案権を侵害しないとして原告の請求を棄却した。そして、〈3〉、〈12〉及び〈25〉事件は一審判決に対する控訴がなく確定し、その余の事件は上訴されたが、現在上告審に係属中の〈15〉及び〈28〉事件(いずれも控訴審では一審判決を維持した。)並びに上告審において原告が訴えを取り下げた〈6〉、〈7〉、〈19〉及び〈20〉事件を除き、すべて上訴審において一審判決が維持され、原告の請求を棄却した判決が確定している。また、旧訴では、原告は、〈1〉事件を損害金総額の内金請求としたが、その余の事件では、いずれも、イ号ないしハ号の被告製品がそれぞれ各期間内に最も少ないもので二万台、最も多いもので九万台製造販売されたとしながら、使用料相当額算定の対象物件はそのうちのそれぞれ五台から五〇〇台までの細分化した数量にして一部請求をしている。なお、原告の訴えを却下した〈15〉及び〈28〉事件の判決は、いずれも、原告の訴えは、一部請求の名のもとにいたずらに同一の訴訟を蒸し返し、これまで繰り返し理由がないとする裁判所の確定した判断を受けている請求と実質的に同じ請求をするもので、被告の地位を不当に長く不安定な状態におき、ことさらに被告に応訴のための負担を強いることを意に介さず、民事訴訟制度を悪用したもので、訴権の濫用にあたり、訴えの利益を欠き不適法であるとしている。(乙一ないし六及び弁論の全趣旨)

〈1〉 昭和五三年(ワ)第七九四〇号事件

〈2〉 昭和六〇年(ワ)第五一三二号事件

〈3〉 昭和六二年(ワ)第五三四号事件

〈4〉 昭和六二年(ワ)第一七九六七号事件

〈5〉 昭和六三年(ワ)第八七〇六号事件

〈6〉 昭和六三年(ワ)第一〇六二七号事件

〈7〉 平成元年(ワ)第一一〇一六号事件

〈8〉 平成元年(ワ)第一五六四六号事件

〈9〉 平成三年(ワ)第四二八五号事件

〈10〉 平成四年(ワ)第三〇三三号事件

〈11〉 平成四年(ワ)第二三二九八号事件

〈12〉 平成五年(ワ)第五六四四号事件

〈13〉 平成五年(ワ)第二〇八二三号事件

〈14〉 平成六年(ワ)第八〇三一号事件

〈15〉 平成七年(ワ)第一一五号事件

〈16〉 昭和六〇年(ワ)第一五七九〇号事件

〈17〉 昭和六二年(ワ)第一六七七九号事件

〈18〉 昭和六三年(ワ)第七七〇三号事件

〈19〉 昭和六三年(ワ)第一〇九二一号事件

〈20〉 平成元年(ワ)第一一〇一七号事件

〈21〉 平成元年(ワ)第一五六四八号事件

〈22〉 平成三年(ワ)第四二八六号事件

〈23〉 平成三年(ワ)第一五〇〇〇号事件

〈24〉 平成四年(ワ)第二三二〇五号事件

〈25〉 平成五年(ワ)第五六四三号事件

〈26〉 平成五年(ワ)第二〇八二四号事件

〈27〉 平成六年(ワ)第八〇三二号事件

〈28〉 平成七年(ワ)第一一八号事件

5  さらに、原告は、被告対し、〈28〉事件提起後本件訴訟の提起前にも、本件とは製造販売時期を異にしてはいるが、同じ被告製品の製造販売が本件実用新案権を侵害するとして被告に対し、不法行為又は不当利得に基き実施料相当額の支払を求めており(当庁平成七年(ワ)第二五五七二九号、以下「別件訴訟」という。)、別件訴訟では、イ号製品及びロ号製品については、昭和四七年三月から同五二年一二月までの間にそれぞれ七万一二〇〇台が製造販売されたとして、いずれもそのうち当初の四万五五五〇台を除いたその後の五台に係る実施料相当額を、ハ号製品については、同四七年二月から同五三年七月までの間に六万四八〇〇台が製造販売されたとして、そのうち当初の三万三六〇〇台を除いたその後の五台に係る実施料相当額をそれぞれ請求している。

(当裁判所に顕著である。)

三  争点

1  原告の本件訴えは訴権を濫用するものであるか。

(一) 被告の主張

原告は、被告対し、過去一七年余りの間に、本件訴えと同様に、被告がイ号製品及びロ号製品を昭和五三年一月から同五六年六月一三日までの間に製造販売し、ハ号製品を同五三年八月一五日から同五六年六月一三日までの間に製造販売したことにより、原告の有していた本件実用新案権を侵害したとして、一三回にわたり対象を細分化した一部請求として東京地方裁判所に訴えを提起し(〈16〉事件ないし〈28〉事件)、被告が被告製品を右各期間と連続する別の期間に製造販売したことにより、原告の有していた本件実用新案権を侵害したとして、一六回にわたり対象を細分化した一部請求として当裁判所に訴えを提起している(〈1〉事件ないし〈15〉事件及び別件訴訟)が、被告製品が本件考案の技術的範囲に属さないことは当裁判所で何度も判断されており、〈15〉事件及び〈28〉事件の判決では、原告の訴えは一部請求の名のもとにいたずらに〈16〉事件ないし〈27〉事件及び〈1〉事件ないし〈14〉事件の「各訴訟と同一の訴訟を蒸し返すものであり、これまで繰り返し理由がないとする裁判所の確定した判断を受けている請求と実質的に同じ請求をするものであって、被告の地位を不当に長く不安定な状態におき、ことさらに被告に応訴のための負担を強いることを意に介さず、民事訴訟制度を悪用したものであるとの評価は免れない。」、原告の訴えは訴権の濫用にあたるもので、訴えの利益を欠き不適法であるとしていずれも訴えを却下され、これらについての控訴も棄却されている。

本件訴えも、右の一連の訴訟と同様に一部請求の名のもとにいたずらに訴訟を繰り返しているだけであり、訴権の濫用であることが明らかであるから、却下されるべきである。

(二) 原告の主張

既判力は主文の判断についてのみ生じ、理由中の判断には及ばないし、いわゆる争点効は判例上認められていないから、本件訴えは、原被告間のこれまでの訴訟の判断に拘束されない。

被告は、原告が最初に〈1〉事件を提起する前に、「天下のリコーは、決して逃げ隠れしない」と断言していた。

原告は、早期解決を目標として最善を尽くし続けて現在に至っているのである。

2  被告製品は、本件考案の技術的範囲に属するか。

(一) 原告の主張

被告製品は、本件考案の構成要件をすべて満たしており、本件考案の技術的範囲に属している。

(二) 被告の主張

被告装置に装備されているロール紙(ロール感光紙)支持機構は、本件考案にいう「カツター装置付きテープホルダー」に該当しないし、被告製品は本件考案にいう「操作摘み9を有する可動刃4の緩挿軸8に幅裁断用切刃7を固着」するという構成要件を充足していないから、被告製品は本件考案の技術的範囲に属さない。

第三  当裁判所の判断

一  私人間の紛争解決を裁判所に求める国民の権能は、裁判を受ける権利として憲法上保障されているものである。そして、民事訴訟手続においては、原則として、原告が被告に対し数量的に可分な債権の一部のみを請求することも認められ、原告がこのような一部請求であることを明示した場合には、当該請求についての判決の既判力は残部の請求には及ばないと解され、先に一部請求を申し立てた原告が、後に残部の支払いを求める訴えを提起することは直ちに不適法となるものではない。

しかし、民事訴訟上の訴えの提起も、権利を実現するための一つの手段であり、訴訟外での権利行使と連続するものであるから、信義に従い誠実に行うべきことは当然であって、その濫用が認められるものではない(民法一条参照)。

したがって、一部請求後の残部請求が、債権をいたずらに多数に分割して相手方に過度の応訴の負担を強いたり、同一の権利の存否について長期間にわたり実質的に同一の審理を何度も蒸し返す等の事情から、もはや一部請求とその後の残部請求が認められている趣旨を著しく逸脱し、訴権の濫用と認められる場合には、そのような残部請求は、訴えの利益を欠き、不適法なものとして却下されるべきである。

二  本件における原告の請求は、第二、一のとおりであるが、原告は、前記第二、二4、5のとおり、本件と同じく被告製品がいずれも本件実用新案権を侵害するとして、過去約一八年の間に合計二九回にわたり被告に対し訴えを提起しており、〈2〉事件の判決では前訴の既判力を、〈16〉事件の判決では消滅時効を理由としてそれぞれ請求を棄却され、〈1〉事件、〈3〉事件ないし〈14〉事件及び〈17〉事件ないし〈27〉事件の各判決では、いずれも被告製品は本件実用新案権を侵害しないという理由で請求を棄却されている。そして、〈1〉事件が損害金総額の内金請求であった以外、その余の旧訴、本件訴訟及び別件訴訟は、いずれも使用料相当額算定の対象物件を、期間内にそれぞれ多数販売された各被告製品のうちの五台分ないし五〇〇台分と極めて細分化した一部請求を繰り返すものである。また、本件実用新案権は昭和五六年六月一三日限り存続期間が満了し、それから既に一五年が経過している。

そうすると、原告の本件訴えは、一部請求の名のもとに〈1〉事件ないし〈28〉事件の訴訟と実質的に同一の訴訟をいたずらに蒸し返すものであり、また、これまでに繰り返し理由がないとする裁判所の確定した判断を受けている〈1〉事件ないし〈14〉事件及び〈16〉事件ないし〈27〉事件の請求と実質的に同一の請求をするものであって、これまで極めて多数回にわたり被告に応訴のための負担を強いてきたうえに、更に被告に応訴のための負担を強い、被告の地位を不当に長く不安定な状態に置くもので、もはや一部請求とその後の残部請求が認められている趣旨を著しく逸脱したものであり、民事訴訟制度を悪用した、裁判を受ける権利を濫用する不適法なものであるといわなければならない。

なお、原告は、被告は、〈1〉事件提起前に「天下のリコーは、決して逃げ隠れしない」と断言していた旨主張するが、仮に被告が〈1〉事件提起前に原告にそのような応対をしたとしても、右のように裁判を受ける権利を濫用するような訴えに応ずる旨の発言であったとは到底解することができない。また、原告は、旧訴の既判力は本件には及ばず、争点効も認められない旨主張するが、原告の本件訴えが不適法とされるのは既判力や争点効によるものではない。

そのほか、原告が実用新案権に関する訴訟を提起し、遂行していくためには相応の時間と費用がかかるとしても、本件のように極めて多数回に分割してその都度請求棄却の確定的判断を受けた請求と実質的に同一の一部請求を繰り返すことが正当化されるものではない。

したがって、本件訴えは、訴権の濫用にあたり、訴えの利益を欠く不適法なものであって、その点を補正することができないものである。

三  よって、原告の本件訴えは不適法であるからこれを却下する。

(裁判長裁判官 設樂隆一 裁判官 橋本英史 裁判官 長谷川恭弘)

〈51〉Int.Cl. B 65 d 〈52〉日本分類 134 C 102.12 日本国特許庁 〈11〉実用新案出願公告

昭47-1919

〈10〉実用新案公報

〈14〉公告 昭和47年(1972)1月22日

〈54〉カツター装置付きテープホルダー

〈21〉実願 昭41-55589

〈22〉出願 昭41(1966)6月13日

〈73〉考案者 佐藤和男

国分寺市新町3の412の20

〈71〉出願人 篠塚賢二

東京都品川区旗の台6の5の46

代理人 弁理士 丹生藤吉 外2名

図面の簡単な説明

第1図は本考案に係るカツター装置付きテープホルダーの縦断側面図、第2図はカツター機構の斜視図、第3図はカツター作動機構の側面図である。

考案の詳細な説明

本考案は接着テープ類を切断するカツター装置を施したホルダーに関するものである。

而して本考案は巻回テープ類を保持する本体1に固定刃2を有する引出口3を形成し、該引出口3には固定刃2と共に、引出したテープT類を剪断する可動刃4を回動自在に設けたカツター装置付テープホルダーにおいて、操作摘み9を有する可動刃4の抜挿軸8に幅截断用切刃7を固着し、軸8と引出口3の間に一対の案内ロール5、6を装架した構造を要旨とするものである。尚図中10は軸8に遊挿した可動刃4の作動レバーを示す

本考案は前記の構成であるから、テープを必要量引出し、レバー10を操作して可動刃4を作動させることにより、可動刃4と固定刃により前記のテープ類を剪断することができるのであつて、特に本案のものは摘み9を回わして幅截断用切刃7を回わして引出すテープを長手方向に沿つて截断できる効果を奏し、実益のある考案である。

実用新案登録請求の範囲

巻回テープ類を保持する本体1に固定刃2を有する引出口3を形成し、該引出口3には固定刃2と共に、引出したテープT類を剪断する可動刃4を回動自在に設けたカツター装置付テープホルダーにおいて、操作摘み9を有する可動刃4の報挿軸8に幅截断用切刃7を固着し、軸8と引出口3の間に一対の案内ロール5、6を装架した構造。

引用文献

実公昭40-2558

実公昭15-13714

実公昭33-10688

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

第3図

〈省略〉

目録 (一)(複写機構を除いた本目録記載の製品は、ロール紙を切断するカツター装置を施した本体に関するものである)。

一 図面の簡単な説明

第1図は、全体的部材位置を示す正面配置図である。

第2図-Cは、ロール紙cの長さ切断用カッター部分fの作動機構を示す正面図である(下部表示参照)。なお、上部表示のものは、下部表示の正面図における長さ切断用カッターの側面を示す。

第4図は、ロール紙cの幅截断用カッター部分bの詳細な断面図である。

第5図は、ロール紙cの幅截断用カッター部分bの中央断面図である。

二 図面符号の説明

a 幅截断用カッター部分bの本体eと一体をなす長さ切断用カッター部分fの本体

b 幅截断用カッター部分

c ロール紙、巻回テーブ類であるロール紙cは、本体a÷eのロール紙cが支持されている定位置から引き出されて順次切断された後、本体a÷eから外出する。

e 幅截断用カッター部分bの本体

f 長さ切断用カッター部分

20 ローラ

21 固定刃

22 回転刃。回転刃22は軸61に装着されている。なお、左右に突出した軸61の部分の長さを除く回転刃22自体の部分の長さは、ロール紙cの幅よりも長い(第2図-cの上部表示のもの参照)。

23 ローラ

27 ソレノイド

28 リンク機構

32 ローラ

40 幅截断用カッターの回動式ツマミ

41 カム

42 モータ

43 カム41、50の軸

44 下回転刃48を装着した軸

45 上回転刃49を装着した軸

46 案内板

47 軸44の軸受

47' 軸45の軸受

48 下回転刃

49 上回転刃

50 カム

51 スライド板

51a スライド板の突起

51b スライド板の突起

52   ネジ

53 長穴

54 スブリング

55 搬送用下ローラ

56 搬送用上ローラ

57 側板本体

58 受板

59 ネジ

60 固定刃21と回転刃22の間隙部

61 回転刃22を装着した軸

三 構造の説明

本製品は、本体a÷eのロール紙cが支持されている定位置から引き出されて順次切断されるロール紙cのローラ56・55が介在関連する「(点で交わる)縦方向と横方向に直角切断」することが可能な各別作動の切断関連位置(右「直角切断」が不可能な左右に横並びの各切断位置でなく、右「直角切断」が可能な前後に縦並びの各切断位置)を保つ構成に係る長さ切断用カツター部分の構成(固定刃21とともに形成された間隙部60において、引き出したロール紙cを横方向に剪断する、軸61に装着されるという方法によつて、回転自在に設けられている回転刃22の構成)及び幅截断用カツター部分の構成(ツマミ40を回すことによつて操作される、引き出すロール紙cを縦方向に截断する軸45、44に各装着されている上回転刃49、下回転刃48の構成)を、本体a÷eに施した構成をもつて一体となつたカツター装置付きテープホルダーの構造となつている。

四 作動の説明

(一) 本製品は、スイッチ(図示せず)オン・オフにより作動状態・不作動状態となる。

(二) その先端を固定刃21の直後に有し、ローラ20に えられた状態で待機しているロール紙cは、信号を受けると、ローラ20がクラッチ(図示せず)により一回転し、これによりロール紙cの先端が常時回転しているローラ23に え込まれて前進していく。

そして、予め選択された長さだけ引き出されると、ソレイド27が作動し、リンク機構28の作用により回転刃22が矢印×方向に回転し固定刃21と協働してロール紙cを頓方向に剪断する(第2図-c参照)。切断されたロール紙cは更に搬送され、ローラ32を経て、ロール紙cの幅截断用カッター部分bへと送り込まれる(第1図参照)。

(三) 幅截断用カッター部分bの幅截断用カッターはツマミ40を回動することにより作動又は不作動状態となる。

ツマミ40を右に回すと、ツマミ40の軸43に軸支されたカム41が回転し、軸受47を押し上げることにより、下回転刃48を支持する軸44が上昇し、これと同時に下回転刃48も上昇して上回転刃49と噛み合う。

一方、軸43の回転によりカム50が回動し、スライド板51の突起51aと係合が外れ、これによってスブリング54により下回転刃48は上回転刃49と噛み合う方向へ移動すると同時にこのスブリング54によって押圧される。この時、スライド板51と突起51bが下回転刃48と係合していることにより、長穴53の中を下回転刃48と同方向に移動する。

この状態で案内板46及び複数個の搬送用下ローラ55ないし上ローラ56を経由して、ロール紙cは、下回転刃48と上回転刃49とにより所定の幅に截断されつつ排出される。

反対に、ツマミ40を左に回して元に戻すと、軸43が前述と逆方向に回動して、軸受47を介して軸44を下降させ、同時にカム50が同様に逆方向に回動し、スライド板51の突起51aと係合する。

これによりスライド板51はやはり前述と逆方向に長穴53を介して移動し、突起51bと係合する下回転刃48を上回転刃49と 反する方向へ移動させる。その結果、上回転刃49と下回転刃48は噛み合わず幅截断を行わなくなる。

(四) 前記のとおり、ツマミ40を適宜作動又は不作動状態にすることによって、ロール紙cの幅截断を必要に応じて行うことができる(第4図及び第5図参照)。

五 作用効果の説明

本製品は、本体a÷eにおいて、長さ切断用カツター部分の長さ切断用カツター(固定刃21、回転刃22)によつて、引き出したロール紙cを横方向に切断することができるとともに、幅截断用カツター部分の幅截断用カツター(上・下回転刃49・48)によつて引き出すロール紙cを縦方向に切断することができる(右可能な切断は、「(点で交わる)直角切断」である。)。

第1図

〈省略〉

第2図-c

〈省略〉

第4図

〈省略〉

第5図

〈省略〉

目録(二) (複写機構を除いた本目録記載の製品は、ロール紙を切断するカツター装置を施した本体に関するものである。)

左に指摘する他は、構造及び作動等とも、目録(一)に記載の構造及び作動等とすべて同一であるので、同目録記載の説明及び同目録添付図面を受用する。

一 目録(一)記載の製品は、B列幅のロール紙cをA列幅に截断するものであり、本目録記載の製品は、ロール紙cの中央を截断してその幅を二分するものである。よって、目録(一)記載の製品では、幅截断用カッターである下回転刃48、上回転刃49がロール紙cの最大幅(B列幅)の中心基準側からA列幅に配置されている。これに対し、本目録の製品の幅截断用カッターは、中央部に配置されている。

二 この幅截断用カッターの配置の違いから、ロール紙c、搬送用下ローラ55及び搬送用上ローラ56の配設位置が異なり、これに伴って、ロール紙cの案内板46の形状が異なっている。

目録(三) (複写機構を除いた本目録記載の製品は、ロール紙を切断するカツター装置を施した本体に関するものである。)

一 図面の簡単な説明

第1図は、全体的部材位置を示す側断面図である。

第3図は、ロール紙1の幅截断用カッター部分の細部を示す詳細図である。

二 図面符号の説明

1 ロール紙。巻回テーブ類であるロール紙1は、本体57のロール紙1が支持されている定位置から引き出されて順次切断された後、本体57から外出する。

2 固定刃

3 回転刃。回転刃3は軸59に装着されている。なお、左右に突出した軸59の部分の長さを除く回転刃3自体の部分の長さは、ロール紙1の幅よりも長い。

4 下回転刃

5 上回転刃

20 幅截断用カツターの回動式ツマミ

21 ツマミ軸

22 切換爪

23 切換連結レバー

24 切換連結軸

25 切換連結アーム

26 ピン

27 切換連結板

28 ピン

29 切換アーム

30 カム軸

31 下回転刃駆動スブロケット

32 上回転刃駆動スブロケット

36 チェーン

40 右側板

41・42 上回転刃軸45の軸受

43・44 下回転刃軸46の軸受

45 上回転刃5を装着した軸

46 下回転刃4を装着した軸

47 下回転刃上下移動カム

48 下回転刃左右移動カム

49 スライド板

49a スライド板の突起部

49b スライド板の突起部

50 下回転刃保持部材

51 スブリング保持板

52 スブリング

53 ガイド板

55 搬送ローラ対

57 本体

58 固定刃2と回転刃3の間隙部

59 回転刃3を装着した軸

三 構造の説明

本製品は、本体57のロール紙1が支持されている定位置から引き出されて順次切断されるロール紙1のローラ対55が介在関連する「(点で交わる)縦方向と横方向に直角切断」することが可能な各別作動の切断関連位置(右「直角切断」が不可能な左右に横並びの各切断位置でなく、右「直角切断」が可能な前後に縦並びの各切断位置)を保つ構成に係る長さ切断用カツター部分の構成(固定刃2とともに形成された間隙部58において、引き出したロール紙1を横方向に剪断する、軸59に装着されるという方法によつて、回転 在に設けられている回転刃3の構成)及び幅截断用カツター部分の構成(ツマミ20を回すことによつて操作される、引き出すロール紙1を縦方向に截断する軸45、46に各装着されている上回転刃5、下回転刃4の構成)を、本体57に施した構成をもつて一体となつたカツター装置付きテーブホルダーの構造となつている。

四 作動の説明

(一) 本製品は、スイッチ(図示せず)オン・オフにより作動状態・不作動状態となる。

(二) 長さ切断用カッター部分においては、回転刃3が時計方向に回転し固定刃2と協働してロール紙1を横方向に剪断する。必要量が引き出されて切断されたロール紙1は、ローラ対55を介して幅截断用カッター部分へと導かれる(第1図参照)。

(三) 幅截断用カッター部分の幅截断用カッターはツマミ20を回動することにより作動又は不作動状態となる。

幅截断用カッターを噛み合い協働させるためにツマミ20を回すと矢印aの方向に回転するカム軸30には、下回転刃左右移動カム48が設けられているため、該カムの回転によりスライド板49の突起部分49aが押され、スライド板は左方向へ移動することになり、その結果、他方の突起部49bが下回転刃保持部材50をスブリング52に抗して左方へ動かすことになる。

一方、カム軸30には他端に下回転刃上下移動カム47が設けられているため、カム軸30の回転により軸受44を押し上げ下回転刃軸46を軸受43側を支点として押し上げる。

ツマミ軸21の回転は下回転刃左右移動カム48をカムの最小位置から最大位置まで回転させると左方へ移動されるスライド板49はカムの最大位置を過ぎた時点でスブリング52のカムより元の位置へ復帰させられる。

この時、下回転刃上下移動カム47は最大位置をとる。すなわち、ツマミ軸21を一杯に回すことにより下回転刃4は上昇しながら左方向から上回転刃5に圧接し、破線で示す位置に固定される。

下回転刃4及び上回転刃5は駆動源(図示しない)からそれぞれの駆動スブロケット31、32に回転が伝達され、両刃の噛み合い点で送られてくるロール紙1の中央位置を截断することになる。

反対に、ロール紙1の幅截断用カッターを作動させない場合は、ツマミ軸21を元に戻すことによりカム軸30が前述と逆方向に回転して軸受44を介して下回転刃軸46を下降させ、同時に下回転刃左右移動カム48が逆方向に回転し、スライド板49を左方向へ移動させ、元位置へ復帰させる。その結果、上回転刃5と下回転刃4との噛み合いがはずれ、ロール紙1の幅截断は行われなくなる(第3図参照)。

五 作用効果の説明

本製品は、本体57において、長さ切断用カツター部分の長さ切断用カッター(固定刃2、回転刃3)によつて、引き出したロール紙1を横方向に切断することができるとともに、幅截断用カッター部分の幅截断用カツター(上・下回転刃5、4)によつて引き出すロール紙1を縦方向に切断することができる(右可能な切断は、「(点で交わる)直角切断」である。)。

第1図

〈省略〉

第3図

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実用新案公報

〈省略〉

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